小川会計コラム 2021年9月17日

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【今回のコラム】

令和3年度地域別最低賃金

2021年9月13日(月)

改定目安は全国平均28円

令和3年度地域別最低賃金改定額は中央最低賃金審議会で賃上げ額の目安が公表され、各都道府県労働局長の決定により10月1日より順次発令される予定です。

地域別最低賃金の全国整合性を図るため目安額のランクを設けていますが、改定額を見ていくとAからDの47都道府県すべてが28円以上引き上げられ、東京都は時給1,041円と最高です。

最高額1,014円と最低額820円の金額差は221円です。低水準の地域の上げ幅は高まることになります。

引き上げ額全国加重平均28円は過去最高

近年最低賃金は引き上げの流れが続いていましたが、令和2年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響を考慮し目安は示されませんでした。今回の引き上げ率は3.1%と過去最高で、今後所得税や社会保険における扶養の壁を意識してパートタイマー等が労働時間を減らすケースがあるかもしれません。中小企業3団体は最低賃金引き上げに反発を示していますが労働者側団体は評価しています。

令和3年度の改定額は以下の通りです。

28円改定

東京 1041円 大阪992円 愛知955円  千葉 953円 神奈川1040円 埼玉 956円 北海道889円 岩手821円 宮城 853円 新潟 859円 石川861円 福井 858円 福島 828円  茨城 879円 栃木 882円 群馬 865円  山梨866円 長野 877円 岐阜880円 静岡 913円 三重 902円 滋賀 896円  京都 937円  兵庫 928円 奈良 866円 和歌山859円  岡山862円 広島 899円  山口 857円  徳島 824円 香川 848円  愛媛 821円 高知 820円 福岡 870円 佐賀 821円 長崎 821円 熊本 821円 宮崎821円 鹿児島 821円 沖縄 820円

29円改定

青森 822円 山形 822円  鳥取 821円 佐賀 821円

30円改定

秋田822円 大分 822円

32円改定

島根 824円

全国加重平均額は930円、昭和53年度に目安制度が始まって以来最高額です

新型コロナウィルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響が児湯・労働に及ぼした影響

2021年9月14日(火)

令和3年版『労働経済の分析』より

2020年に新型コロナウィルス感染症の影響を大きく受けた労働経済でどのような影響がどれくらいあったのか、分析結果が発表されたので紹介します。

感染拡大の防止のための経済活動の抑制により2020年4月には就業者数、雇用者数が約100万人減少。その後穏やかに回復したが年内には元に戻らず、一方で非労働力人口は4月に約100万人増と大幅に増加した後、穏やかに減少し元の水準に戻っています。

就業者数、雇用者数が減った一方、完全失業者数、完全失業率は緩やかな上昇傾向で10月には完全失業率3.1%でした。

労働移動・労働環境

転職者数(過去1年以内に離職経験のある就業者)の推移をみると、2020年は感染拡大の影響により2010年以来10年ぶりに減少に転じ32万人と減少幅も大きくなっています。転職理由も前年より変化し、2020年には「人員整理、勧奨退職」が増え、前年の「より良い条件の仕事を探すため」の転職者は大きく減少しています。

雇用者全体の賃金総額は企業の雇用維持の取り組みや政策の下支えにより小幅な減少にとどまっています。雇用調整助成金が失業の抑制とはなっているが成長分野への労働移動を遅らせています。産業別の雇用者の増減では、情報通信業や医療福祉関連は堅調に増加が続いているが、宿泊、飲食、卸売・小売、娯楽では減少幅が大きくリーマン・ショックの時のように製造業での減少が目立った例とは異なっています。

働き方改革に関連した指標の状況では法改正と新型コロナが重なったこともあり、長時間労働の是正で労働時間は大きく減少、年次有給休暇の取得率も上昇しています。

テレワーク定着に向けた分析

テレワークの実施状況を開始時期別にみると、感染拡大前からテレワークを実施していた企業や労働者の方が感染拡大下でテレワークを始めた企業や労働者よりも継続割合が高い結果が出ました。途中でテレワークを実施しなくなった企業の理由をみると業務の性質や感染の影響の外、仕事の進め方やテレワークの環境整備といった労務管理上の工夫が必要であり、対応可能な事項(コミュニケーション、業務進捗の把握、テレワークを行う環境整備等)などが課題となっています。

感染症の影響は2021年も労働経済を直撃しています。早く収束しますように

遺贈寄附という選択

2021年9月15日(水)

いつか自身に起きる相続。これまでの人生を振り返り、生きた証として財産を社会に貢献する事業に役立てたい、そんな思いを伝える手段の一つが遺贈寄附です。

遺言による遺贈寄附と相続財産の遺贈寄附

遺贈寄附とは、国や地方公共団体、公益法人等に、財産を遺言で贈与すること、及び、被相続人の生前の意思を引継いだ相続人が、相続財産を贈与することをいいます。

遺贈寄附の手続き

まずは遺贈先の選定です。新聞、雑誌、TVの報道、ネット情報から社会貢献する団体の活動に触れて支援する法人を探します。

紛争地帯で医療や住居などを支援するNPO法人は、寄附先としてお馴染みですが、最近は博物館や地方自治体の動物園など、親しんだ団体に遺贈する人もいるようです。

寄附は現金のみ受付し、不動産は売却、換金したうえで遺贈を求める団体が多数ですが、不動産を受け入れる団体もあります。

遺贈先が決まったら、遺言執行者を選定して遺言書を作成します。税理士をはじめ、弁護士、司法書士、行政書士など専門家に相談しましょう。遺言は公正証書遺言、または自筆証書遺言を選択できます。

不動産等の遺贈は譲渡所得課税に注意!

土地や建物、株式など譲渡所得の基因となる財産を法人に遺贈した人には、その財産の取得から遺贈時までの値上り益に譲渡所得税が課されますが、国税庁長官に申請して承認を受けた場合は非課税となります。

ただし、遺贈した人の所得税の負担や、遺贈した人の親族のほか特殊関係人の相続税、贈与税の負担を不当に減少させる場合には、非課税承認は取り消され、遺贈した人、又は遺贈先の法人に譲渡所得税が課されることになるので注意を要します。

また、相続人が被相続人の意思を引継ぎ、相続財産を国や地方公共団体、公益法人等に贈与する場合にも相続税を非課税とする制度があります。この場合も不動産等の贈与について譲渡所得税を非課税とするには、国税庁長官の承認が必要です。

相続人の遺留分にも配慮を忘れない!

社会の高齢化が進むなかで遺贈寄附の希望者も増えていくのではないでしょうか。ただし、相続財産には遺留分があります。遺贈寄附を決めるときは、相続人の遺留分にも配慮して後でトラブルが生じないよう検討することを忘れないようにしましょう。

ふるさと納税の裏側ふるさと納税と地方交付税

2021年9月16日(木)

令和2年度は過去最高額を記録

総務省から発表された令和2年度(令和2年4月~令和3年3月)のふるさと納税の寄附の見込み総額は約6,725億円で、過去最高となりました。

令和元年度は総務省の新ルール「お礼の品は寄附額の3割まで」といったマイナスイメージが台頭したためか、平成30年度から一旦微減していましたが、新型コロナウイルス感染症の巣ごもり需要か、寄附意識の向上か、はたまた新ルール適用後でもお得感があるためか、寄附総額はこの1年で大きく伸びました。

あまり知られていないウラのしくみ

ふるさと納税は簡単に言うと「寄附先に、自分が住んでいる自治体の税金の一部を払う」わけですから、自分の住んでいる自治体に入る税金は確実に減ります。ただし「寄附によって減った住民税額の75%は翌年に地方交付税として補填される」という仕組みになっているので、住民税が減額された額すべてが消え失せてしまうわけではありません。ただ、交付されるのは減収があった翌年ですし、25%は失われるわけですから、たくさんの住民が他の地域に寄附をする自治体にとってつらいのは確かでしょう。

また地方交付税を規定により受け取れない「不交付団体」については、この75%ルールの適用がありません。そのため、東京23区や、その他不交付団体であった川崎市などは、「ふるさと納税のせいで税収が減った」とアピールしていました。

なお、川崎市は令和3年度からは交付団体となったので今年は去年の寄附額の75%は交付されるようです。新型コロナウイルス感染症のためか、地方交付税の不交付団体は去年の76団体から今年は54団体へと減りました。

ふるさと納税制度をどう見るか?

ふるさとへの支援としてふるさと納税が大きな役割を担う一方、主に都市部に関してはふるさと納税によって減収になるわけで、これを再分配機能と歓迎するか、はたまたバランスの悪いシステムと批判するか。立ち位置が変われば見方も変わるものです。

地域振興や人道的支援等、ふるさと納税は税額やお礼の品以外の側面もたくさんあります。

消費税率は8%?10%?栄養ドリンク剤と消費税率

2021年9月17日(金)

栄養ドリンク剤と消費税率

令和元年10月にスタートした消費税の軽減税率制度。「飲食料品(酒類・外食を除く)」と「新聞(週2以上発行の定期購読)」の譲渡が軽減税率8%の対象となります。今でも、コンビニの買い物のレシートを見ると「どれが10%で、どれが8%なの?」と思うものもいくつかありますよね。

例えば、栄養ドリンク剤。8%のものと10%のものがあります。医薬部外品扱いのものが飲食料品から除かれるのが理由です。

医薬部外品消費税率10%
その他
(清涼飲料水)
消費税率8%

医薬部外品の代表としては「リポビタンD」、その他の代表は「オロナミンC」。今ではコンビニに並んで売られていますが、一昔前は、そういう訳ではありませんでした。

最初は医薬品だったリポビタンD

大正製薬のHPによると、リポビタンDの誕生は、日本の高度成長期の昭和30年代。もともとは錠剤とアンプル剤で提供されていた「リポビタン」にタウリンを配合。アンプル剤を大型化し、医薬品として販売を開始しました。味にもこだわった結果、大ヒット商品となりました。また、「薬を冷やす」という発想がなかった薬局に、ドリンク剤の冷蔵ストッカーを提供したり、販売手法も目新しいものでした。

炭酸を入れたら販売ルートを失った!?

オロナミンCは、リポビタンDより後発です。大塚製薬も幾つか栄養ドリンク剤を発売していましたが、それに炭酸を入れることを思いつきます。ただ、当時の厚生省は炭酸を入れた場合、医薬品とは認めない方針。そうなると主な販売先である薬局系ルートで販売できません。商品を諦めきれなかった大塚製薬は、販売ルート開拓に挑戦します。小売店、交通機関、病院や浴場など未開の販売先を地道に広げていきました。

規制緩和により2つの商品が並ぶことに

そのため、この2つの商品は販売ルートが全く別でした。時代が流れ、規制緩和により、リポビタンDは、平成11年に医薬部外品に移行。平成21年の薬事法改正で、コンビニ等の一部小売りが可能となりました。