小川会計コラム 2021年11月19日

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【今回のコラム】

免税事業者は少しだけ非課税大家さんより有利

2021年11月15日(月)

家賃非課税となったときの行政指導

平成3年9月までは、居住用家賃についても消費税課税対象でした。課税対象から非課税対象への切り替えがスムーズに行い得るようにする、建設省住宅局長の発遣文書があります。

その文書は、課税が非課税に変わるに際し、当時の税率3%全額を減額するのではなく、賃貸住宅経営のための必要な諸経費や資材購入に係る消費税を、先の3%から控除した残額を減額する、としています。

前段階消費税分の転嫁は必要事としての行政指導なのです。ただし、これを実行した大家さんは、ほとんどいなそうです。

インボイス開始後6年間の激変緩和措置

令和5年10月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が新たに始まるわけですが、インボイス番号を持たない免税事業者から受け取る請求書等は、適格請求書等ではないけれど、令和5年10月1日から最初の3年間は取引額総額の110分の10の80%を仕入税額控除可能とし、次の3年間は当該110分の10の50%を仕入税額控除可能、としています。

でもこの措置は、免税事業者の前段階消費税転嫁のための配慮ではなく、仕入側への配慮措置なので、この6年経過後は、何の配慮措置も残りません。

免税事業者の消費税の転嫁の可能性

相手が個人消費者なら、免税事業者が消費税の転嫁をしても何の異議も聞こえて来ないでしょう。また、希少価値のある事業者なら、免税事業者か課税事業者かを問われることなく取引されるかもしれません。

でも、BtoBでの取引弱者に該当する多くの免税事業者にとっては、非課税事業の大家さんと同じく、転嫁出来ない前段階消費税の自己負担化(損税)になりそうです。

免税事業者の価格転嫁と簡易課税

免税事業者でも、インボイス番号取得により課税事業者に変身すれば、前段階消費税の自己負担は消えます。ただし、申告と納税の煩瑣が生じます。

申告納税の煩瑣を多少なりともカバーしてくれるのは、簡易課税かもしれません。

免税事業者には、非課税事業の大家さんよりも、前段階消費税の自己負担化を回避する途が少しだけ広く開かれている、と言えそうです。

インボイス制度導入はBtoBでの免税事業者制度の廃止の効果をもたらすだろうな。

生命保険金受取人の実質判定

2021年11月16日(火)

生命保険に加入すると、保険金の受取人を指定しますが、いざ被保険者が死亡した時、保険金を渡したい人が当初から変わってしまっているときもあります。そのような場合、課税関係はどうなるのでしょうか。

両親から妻や子への名義変更

社会人になって初めて生命保険に加入するとき、保険金の受取人に自身の両親を指定することが少なくありませんが、その後、結婚して子供が生まれ、家族ができてからも保険金受取人の変更手続きをせずに親の名義のままとなっている場合があります。

しかし、自身が病気や不慮の事故で死亡してしまったとき、残された家族の生計を支えていくことを思えば、保険金の受取人は妻や子になってほしいところです。

受取人名義変更の課税関係

相続では保険金受取人は、保険契約上の受取人となりますが、保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合、保険金受取人の変更手続きがなされていなかったことについて、やむをえない事情があるなど相当の理由があると認められるときは、実際に保険金を受け取った者を保険金受取人とする取扱いがあります。

契約上の保険金受取人である両親も妻や子を保険金受取人とすることを望み、やむを得ない事情があると認められれば、妻や子のみなし相続財産として課税対象となり、また、相続人となるので非課税措置の適用を受けることもできます。

なお、生命保険金の受取人名義を変更した時点では課税関係は生じません。被相続人が自身を被保険者とし、保険料を負担している場合は、保険事故(被保険者の死亡)が発生して保険金の受取りが確定したときに課税関係が生じます。

離婚した元妻からの名義変更

ところで妻を受取人とする生命保険に加入していた夫が、離婚しても受取人名義を元妻のまま変更せずに死亡してしまったら、どうなるでしょうか。この場合、元妻は離婚しても保険金受取人の地位を失わないため、生命保険金は元妻に支払われ、みなし相続財産として課税対象となります。そして元妻は相続人ではないので生命保険金の非課税措置の適用は受けられません。

離婚するときは、財産分与とあわせて、生命保険金受取人の名義変更についても忘れないようにしましょう。

相続放棄の場合の生命保険金

2021年11月17日(水)

被相続人に多額の債務があり、相続人としては相続放棄したいけれど、生命保険金まで放棄しなければいけないのか気になるところです。

相続放棄でも生命保険金は受け取れる

相続人は、相続放棄することにより、被相続人の財産・債務を一切承継しない選択ができます。手続きとして自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄を家庭裁判所に申し立てることが必要です。

生命保険金は、民法上の相続財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となるので、相続人は生命保険金を受け取ることができます。みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、相続放棄をした者は、初めから相続人とならないので、生命保険金の非課税措置を受けることはできません。それでも保険金が手許に入ることは、メリットといえるでしょう。

限定承認でも生命保険金は受け取れる

それでは、限定承認により相続人が取得する財産の範囲内で債務を弁済することとした場合はどうなるでしょうか。

限定承認の手続きは、相続放棄と同様、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることが必要です。相続人は被相続人の債務を全額承継しますが、弁済の責任は被相続人の財産の範囲に限られます。未納の国税がある場合でも被相続人の財産の限度で弁済すればよいので財産の額を超えた滞納税額に納税義務を負いません。

相続人が生命保険金を固有の財産として受け取ることができるのは相続放棄の場合と同じです。生命保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、限定承認の場合は、相続人の地位を有しているので、生命保険金の非課税措置を受けることができます。

詐害行為とみなされないように

ところで生命保険金の受取人としていた相続人も債務超過の状態となり、親族間で財産保全をはかるため、他の相続人に受取人名義を変更する場合は注意が必要です。その名義変更が債権者の権利を害する詐害行為(さがいこうい)と認められた場合、その名義変更は取り消され、生命保険金は名義変更前の相続人の取得財産として債務の弁済に充当されてしまうかもしれません。

育児休業給付みなし期間特例で受給要件緩和

2021年11月18日(木)

雇用保険法の改正について

先の国会で育児休業・介護休業法と雇用保険法の一部を改正する法律が可決成立されました。その一部である育児休業給付に関しての改正が令和3年9月から施行されています。

これまで被保険者期間の受給要件を満たさなかった場合でも、みなし期間特例で支給の対象になる可能性があります。

原則の育児休業給付金の被保険者期間は育児休業開始日を起算点として、その日前2年間に賃金支払い基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12か月以上あることが前提でしたが、改正後はこの要件を満たさない場合でも産前休業開始日等を起算点としてその日前2年間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある完全月が12か月ある場合には育児休業給付の支給に係る被保険者要件を満たすものとしました。勤務開始後1年程度で産休に入った方等は対象になるかもしれません。

育児休業給付の受給要件とは

育児休業を開始した日(出産日から58日目)前2年間に被保険者期間が12か月以上あることです。男性も対象になります。今回の改正でこの2年間の期間を緩和し、産前休業開始日前から2年間でも対象期間とみなすことになりました。

育児休業給付金はおよそいくら位?

原則的な計算ですが休業開始時賃金日額(休業開始前6か月)の総支給額を180で除した額が日額です。

休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育休開始後6か月経過後50%)。

育児休業中に就労した場合

就労した場合は支給単位期間中の就労日数が10日以下(10日を超えるときは80時間以下)であれば支給されます。賃金日額×支給日数の80%以上の賃金額が払われているときは支給されません。

育児休業給付はいつまで支給される?

原則は養育している子が1歳となった日の前日まで、その前に復帰をすれば復帰日の前日までです。また、保育所(認可園)の申し込みをしているが入所できない場合は1歳6か月、2歳到達日前日まで延長ができます。

育児休業開始日が令和3年9月1日以降の方が対象です

SDGsと就活生の会社選び

2021年11月19日(金)

SDGsとは何でしょう?

最近よく耳にするSDGsとは、持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals)を指す言葉です。2015年9月の国連サミットにおいて加盟国の全会一致で採択されました。

2030年までに達成すべき、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。目標にはたとえば「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「人や国の不平等をなくそう」などがあります。実現するために進むべき道を具体的に示した指標であり17のゴール・169のターゲットから構成されています。発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり積極的に取り組む企業が増えてきています。

取り組み度合いと就職志望度

企業のSDGsへの取り組みは、人材採用の面にも影響があるのでしょうか? 就職志望度との関連を2022年3月卒業予定の大学4年生と理系の大学院修士卒予定者に聞いたところ、SDGsに積極的に取り組んでいることがその企業の志望度に「影響する」「とても影響する、志望度が上がる」「やや影響する」を合わせると4割を超えていて、就活生の関心の高さがうかがえました。理由としては「企業の社会的役割重視」や「将来性ある企業と判断できる」などで会社説明会やHP等で認知されています。

企業が取り組めるSDGsの課題

民間調査会社㈱ディスコの調査によると

企業がSDGsの中で取り組めると思う項目としては「産業と技術革新の基盤を作ろう」

「働きがいも経済成長も」が圧倒的に上位にあげられ、次に「すべての人に健康と福祉を」「住み続けられる街づくり」「作る責任使う責任」「エネルギーを皆に、そしてクリーンに」「ジェンダー平等を実現しよう」などが続いています。

政府は2017年より「ジャパンSDGsアワード」として目標達成に優れた取り組みを行っている企業、地方自治体、団体等を表彰し行動推進を促しています。

就活に限らず中小企業でもこれから、たとえば入札の時などSDGsの取り組み状況を求められるかもしれません。取組期間は当分続くので、自社でできることを考えてみるのもよいでしょう。

持続可能な未来を目指し、世界共通の目標に向け取り組む課題ですね